従業員の不倫に対する使用者責任の有無を問う裁判があった。
原告は男性で、従業員が妻との不貞行為を通じ、同業他社の情報・動向を収集しており、これはその従業員の勤める会社の事業の執行にあたると訴えた。被告は、従業員の勤める会社ということになる。
これに対して東京地裁(藤澤裕介裁判長)は、不貞行為は職務の範囲になく、情報収集の手段にしているとみるのも無理があるとして主張を退けた。不貞行為を含む男女関係は基本的に私生活の領域にあたるため、会社は責任を負わないという判決だ。
妻の不倫相手の会社に怒鳴り込む、というシチュエーションは、テレビドラマでよく見るし、現実の世界でもありそうだ。
これを裁判に持ち込む、というところがすごいところだ。法曹関係者でもなければ、訴訟というのはハードルが高い。それだけこの男性の怒りが大きかったということだろうか。
地方裁判所での民事裁判件数は2003年をピークに減少傾向にあるらしい。その原因を論じる論考はあまりみかけないが、ひとつには訴訟にかかる費用や手間に比べ、結果によって得られるリターンが小さいことに原因があるのではないか。
素人目にも勝ち目が薄いと感じる本事件で訴訟に踏み切ったこの男性は、何を求めて何を得たのだろう。