雇用主の裁量権。

法務省で働く国家公務員の職員が、自宅から通勤に3時間30分かかる遠方への異動は違法だと訴えた裁判で、東京地方裁判所は移動命令を有効と判断した。
職員の主張は、共働きで家事・育児の大部分を担っているという家庭の事情を無視した異動命令であるというもの。
これに対し、判決では配偶者の勤務先と異動先の中間点に住むなどして家事を分担する方法があると指摘した。
ここで問題となっているのは、雇用主の裁量権の逸脱・濫用である。
日本においては、雇用主都合による解雇が難しいことから、雇用を維持するための配置転換や異動に対する雇用主の裁量権が広範に認められる傾向にある。今回の判決でも、裁量権の逸脱・濫用はないと判断された。ある意味、従来の判断を踏襲したともいえる。
一方で、少子化対策の一環として、次世代育成支援法がある。この職員の勤務先である法務省も、この法律に基づく行動計画を策定しており、そこには育児・介護に配慮した人事管理に努めると規定されている。
また、厚労省では男性の育休促進に向けた制度見直しをすすめており、仕事と育児・介護などを両立させるための両立支援の取組みの充実化を図っている。これらは、新しい社会(少子化、高齢化社会)における新しい流れといえる。
そういう中での、今回の判断だ。
従来の判断を維持すべきか、それとも新しい社会の到来に対応した判断を行うべきか。
少子化、高齢化による超人口減少社会が目前に迫るなか、雇用をめぐる様々な問題の再検討が喫緊の課題といえるだろう。



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