産業雇用安定助成金とは?

新型コロナウイルス感染症の影響により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、従業員を他の企業に出向させることで雇用を維持する場合、出向元、出向先双方の事業主に助成金を支給するというのが、この「産業雇用安定助成金」です。

この助成金で受給できる金額は?

受給対象となる経費には、出向運営経費と出向初期経費があります。

出向運営経費とは?

対象となる出向期間中において出向元事業所または出向先事業所が出向に要した以下の①~⑤のいずれかに該当するものです。

①出向元事業主または出向先事業主が出向労働者に賃金(社会保険料は除く)として支払った額
②出向労働者の労務管理、人事評価に要する経費
③出向先事業所または出向労働者から出向元事業所に対する報告、面談に要する経費
④出向先事業所が負担した出向先事業所における教育訓練に「要する経費
⑤その他、出向期間中における出向の運営に要すると認められる経費

出向運営経費の助成率

助成率は、中小企業の場合4/5、大企業の場合2/3となっています。ただし、出向元事業主が解雇等を行わず雇用維持を行う場合には、中小企業9/10、大企業3/4となります。

出向運営経費の上限額

1人、1日あたりの助成額の上限は、12,000円です。

出向初期経費とは?

出向元事業所または出向先事業所において、出向期間の初日までに出向労働者に対して要した以下の①~⑧のいずれかの経費を要する措置を実施した場合には出向初期経費の支給対象となります。

①出向先事業主の負担する、出向先事業所における出向労働者に係る什器・OA環境整備費用、被服費等の初度調弁費用にあたる経費
②出向元事業所または出向先事業所の職場見学、業務説明会の実施に要する経費
③出向元事業所と出向先事業所の間で行われる出向労働者の労働条件、スケジュールの調整に要する経費
④出向元事業所および出向先事業所の就業規則等の整備・改正に要する経費
⑤出向元事業所および出向先事業所の出向契約書の作成・締結に要する経費
⑥出向元事業所および出向先事業所の教育訓練に要する経費
⑦出向労働者の転居に係る経費(事業主がその全部または一部を負担する場合に限る)
⑧その他、出向の成立に要すると認められる経費

出向初期経費の上限額

出向労働者1人につき1度限りで100,000円となります。ただし、出向元事業主につき次のアに該当する場合、また、出向先事業主につき次のイに該当する場合には、50,000円の上乗せとなります。

ア.出向元事業主が次の(ア)または(イ)に該当すること
(ア)出向元事業主の業種の大分類が次のa~cに該当すること
a.運輸業、郵便業(大分類H)
b.宿泊業、飲食サービス業(大分類M)
c.生活関連サービス業、娯楽業(大分類N)
(イ)出向元事業所の生産指標の最近3か月間の月平均値が前年同時期に比べて20%以上減少していること
イ.出向先事業所の業種の大分類が出向元事業所と異なるものであること

対象となる出向とは?

いわゆる「在籍型出向」が、この助成金の対象となります。在籍型出向とは、雇用している従業員が元の事業所の従業員としての地位を保有しつつ、出向先の事業所で勤務し、出向期間終了後に元の事業所に復帰する形態の出向をいいます。出向期間内に出向元事業所と出向先事業所の両方に勤務する部分出向も、助成金の対象になります。
ただし、資本的、経済的、組織的関連性からみて独立性を認められない事業主間の出向は、助成金の対象になりません。
なお、既に出向を実施している場合でも助成金の対象となる場合がありますので、ご相談ください。

独立性の判断基準は?

出向元と出向先の間の出資などの状況が、以下のaまたはbに該当する場合は、独立性を認められないと判断されます。

a.資本金の50%を超えて出資していること
b.取締役会の構成員について、次のいずれかに該当すること
(イ)代表者が同一であること
(ロ)両社の取締役を兼務している者が、いずれかの会社について過半数を占めていること

対象となる事業主とは?

新型コロナウイルス感染症に伴う経済上の理由により、事業活動の縮小を余儀なくされた場合に、その雇用する対象労働者の雇用に維持を図るために、労使間の協定に基づき出向を実施した事業主が、助成金の対象となります。
また、出向先の事業主は、解雇等や雇用量の減少がないことなどの要件を満たす必要があります。

新型コロナウイルス感染症に伴う経済上の理由とは?

新型コロナウイルス感染症の影響に伴う景気の変動及び産業構造の変化ならびに地域経済の衰退、競合する商品・サービスの出現、消費者物価・海外為替その他の価格の変動などの経済事情の変化をいいます。
<支給対象とならない例>
・例年繰り返される季節的変動によるもの
・事故または災害により施設または設備が被害を受けたことによるもの
<支給対象となる例>
・観光客のキャンセルが相次ぎ、客数が減り、売上が減少した
・市民活動が自粛されたことにより、客数が減り、売上が減少した
・行政からの営業自粛要請を受け休業したことにより、売上が減少した

事業活動の縮小とは?

売上高や生産量などの事業活動を示す指標(生産指標)が一定以上減少していることを指します。具体的には、以下のaからcのいずれかに該当する必要があります。


a.生産指標の最近1か月の値が、1年前の同じ1か月の値に比べて5%以上減少していること
b.生産指標の最近1か月の値が、2年前の同じ罪に比べて5%以上減少していること
c.生産指標の最近1か月の値が、計画届を提出した月の1年前の同じ月から計画届を提出した月の前々月までの間の適当な1か月に比べ5%以上減少していること

*最近1か月とは、計画届の提出日が属する月の前月を指します

労使協定とは?

この助成金は、出向の実施について労使間で事前に協定し、その決定に沿って出向することを条件としています。労使協定は、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合、ない場合には労働者の過半数を代表するものとの間で書面により行う必要があります。

支給対象となる期間と日数は?

出向元事業主が、雇用する雇用保険被保険者に対して1か月以上2年以内の期間で実施した出向が対象となります。
また、同一の雇用保険適用事業所につき、1年度当り500人分が上限となります。

支給対象となる労働者は?

出向した日の前日において、出向元事業主に6ヵ月以上引き続き雇用されている必要があります。また、解雇を予告されている方や退職願を提出された方、事業主による退職勧奨に応じた方、日雇労働被保険者の方などは、助成金の対象となりません。

出向する労働者に対する賃金について

この助成金の支給対象となる支給期間中の出向労働者に支払う賃金は、出向前の賃金に相当する額であることが必要です。
具体的には、出向前の賃金の85%から115%の範囲内である必要があります。

出向先を探すには?

各都道府県に設置されている(公財)産業雇用安定センターでは、企業間の出向の斡旋を無料で行っています。
詳しくは、産業雇用安定センターのホームページをご覧ください。

手続きに関するお問い合わせ

当社会保険労務士事務所では、産業雇用安定助成金受給手続きのお手伝いを行っております。初回のご相談については無料で承っていますので、受給手続きや受給の可否判断などについて、お気軽にお問い合わせください。詳しくは、以下のフォームからお願いいたします。